説明
摂食嚥下訓練は医行為(医業)と判断されるため、医業が法律によってどのように定められているのかを理解した上で、訓練に関わることが必要です。
医師(歯科医師)以外の者が、医業(歯科医業)を行うことを、法が禁止しています。看護師は診療の補助を行うことを業とすることが規定され、看護師以外の者が診療の補助を行うことを保健師助産師看護師法第31条第1項が禁止しています。また、准看護師は医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて診療の補助を行うことを業とすることが規定され、准看護師以外の者がこれらを行うことを保健師助産師看護師法第32条が禁止しています。
これらを受けて、言語聴覚士法、理学療法士及び作業療法士法、及び歯科衛生士法では、医師又は歯科医師の指示の下に、保健師助産師看護師法第31条第1項及び第32条に関わらず、職種ごとに限定された範囲について「診療の補助」を実施することが規定されています。
近年、在宅療養における現実的な問題から、これら医療職以外の者が援助する行為が医業に該当するか否か、医業の解釈が示されました(医政発第0726005号)。
ここでは、医業(歯科医業)及び診療の補助に関する規定を理解したうえで、各専門職が実施することのできる医行為を理解することを目的として解説します。
説明
医師法第17条に「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定されています。第31条には、医師法第17条に違反したときの罰則が規定されています。
説明
同様に、歯科医師法第17条に「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない」と規定されています。第29条には、歯科医師法第17条に違反したときの罰則が規定されています。
説明
看護師及び准看護師は保健師助産師看護師法によって規定されています。同法第5条に看護師が診療の補助を業とすることが認められています。さらに、同法第6条では、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、准看護師が診療の補助を行うことを業とすることが規定されています。
説明
保健師助産師看護師法第31条第1項には、看護師以外の者が第5条に規定する業、つまり「診療の補助」を行うことを禁止しています。同法第32条では、准看護師以外の者が第6条に規定する業を行うことを禁止しています。従って、他の医療専門職が診療の補助を行うときには、同法第31条第1項及び第32条に抵触します。
さらに、同法第37条において、看護師又は准看護師は、医師又は歯科医師の指示がなければ、緊急回避を除き、医行為を実施できないことが規定されています。その医行為は「診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為」として示されています。
また、保健師助産師看護師法の一部改正が平成27年10月1日に施行されました。特定行為及び特定行為研修(平成27年3月13日厚生労働省令第33号による)に関連して、第37条の2、第37条の3、第37条の4が追加されました。
説明
言語聴覚士は言語聴覚士法によって規定されています。そして、同法第42条第1項に、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練を業とすることができると明記されています。
説明
理学療法士、作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法によって規定されています。同法第2条に、理学療法及び作業療法が定義され、理学療法士とは「厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。」、作業療法士とは、「厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。」と定義されています。
説明
理学療法士及び作業療法士法第15条第1項において、理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができると明記されています。
説明
平成22年4月30日付け厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」において、痰の吸引は「言語訓練その他の訓練」に含まれるとの解釈が示され、言語聴覚士は診療の補助として痰の吸引を実施することができるようになりました。同様に、痰の吸引は「理学療法」及び「作業療法」に含まれるとの解釈が示され、理学療法士及び作業療法士は診療の補助として痰の吸引を実施することができるようになりました。
ただし、痰の吸引を安全に実施するために、必要となる教育・研修を受けた言語聴覚士、理学療法士又は作業療法士が行うように示されました。
説明
歯科衛生士は、歯科衛生士法によって規定されています。同法第2条に歯科衛生士が定義され、その業務として歯牙及び口腔の疾患の予防処置(2項目)が規定されています。第2項には、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすことを業とすることができると示されています。さらに、第3項には、歯科衛生士の名称を用いて、歯科保健指導をなすことを業とすると規定されています。
また、歯科衛生士法が一部改正され、平成27年4月1日施行されました。歯科衛生士法第2条第1項の「歯科医師の直接の指導の下に」を「歯科医師の指導の下に」と改正され、「直接の」指導までは要しないこととなりました。これに関連して、第13条の5を追加する改正がなされ、適正な歯科医療の確保に努めることが明記されました。さらに、「女子」を「者」へ改正し、附則第2項の「男子」への準用規定が削除されました。
説明
歯科衛生士法第13条は、歯科衛生士以外の者が1)歯牙露出面及び正常な歯茎の遊離縁下の付着物及び沈着物を機械的操作によって除去すること、2)歯牙及び口腔に対して薬物を塗布することを行うことを禁止しています。
また、第13条の2には、歯科診療の補助を行うとき歯科医師の指示を要することが規定されていますが、歯科保健指導を行うときには、主治の歯科医師又は医師がいる場合、その指示を受けることが第13条の3に示されています。
説明
歯科衛生士法第14条及び第18条には、歯科衛生士の業務に関する罰則として、第13条、第13条の2、第13条の3に違反したときの内容が規定されています。
説明
平成17年7月26日に、厚生労働省医政局長通知(医政発第0726005号)「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」が示されました。その通知では、「医業」の解釈として、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことである」と示されました。 同通知では、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等において判断に疑義が生じることの多い行為であって原則として医行為ではないと考えられるものが列挙され、その一つに「(2)重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること」が示されています。
説明
栄養士及び管理栄養士は栄養士法によって規定され、第1条にその定義が示されています。栄養士は栄養の指導に従事することを業とする者と規定され、管理栄養士は傷病者に対する療養のために必要な栄養の指導ができることが規定されています。さらに、管理栄養士は、特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等の実施を業とすることができます。
説明
栄養士法第5条の5において、管理栄養士が傷病者に対する栄養指導を行うときには、医師の指導を受けなければならないことが規定されています。しかし、栄養士法は、栄養士、管理栄養士による診療の補助を認めていないので医行為を実施することができません。
説明
平成30年度診療報酬改定に関係して、厚生労働省保健局医療課長から平成30年3月5日付け保医発第0305第1号として「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」が通知されました。
摂食機能療法を算定できる専門職として、医師又は歯科医師の他、言語聴覚士、看護師、准看護師、歯科衛生士、理学療法士又は作業療法士であることが明記されています。ただし、嚥下訓練が摂食機能療法として算定される専門職は、言語聴覚士、看護師、准看護師又は歯科衛生士です。
説明
医師法第17条及び歯科医師法第17条によって、医師又は歯科医師以外の者による医業又は歯科医業が禁止され、保健師助産師看護師法第31条の第1項及び第32条によって、看護師又は准看護師以外の者が、診療の補助を行うことを禁止しています。看護師又は准看護師に対しては、同法第37条によって医師の指示の下に行う診療の補助以外の医業の禁止が規定されています。
言語聴覚士、理学療法士、作業療法士及び歯科衛生士は、「保健師助産師看護師法第31条の第1項及び第32条の規定にかかわらず」として、各専門職が実施できる診療の補助が規定されています。言語聴覚士、理学療法士及び作業療法士には、平成22年4月30日から痰の吸引が認められました。また、言語聴覚士は診療の補助として嚥下訓練を業とすることが法的に規定された唯一の専門職です。医行為である診療の補助を実施するとき、医師又は歯科医師の指示が必要です。歯科衛生士による歯科診療の補助では、歯科医師の指示が必要です。
また、栄養士は栄養指導を業とし、管理栄養士は医師の指導の下に傷病者に対する栄養指導を行うことができますが、診療の補助の実施は認められていません。摂食嚥下リハビリテーションに関わるとき、法に規定された各専門職の業務の範囲を理解することが重要です。