説明
1)VF、VE以外の医療機器を用いた摂食嚥下機能の評価法の意義と注意点について理解する
2)臨床現場でよく用いられている医療機器を用いた評価方法とその特徴を理解する
説明
VF、VEのほかにも医療機器を用いた摂食嚥下機能の評価法があり、VFやVEの補助として実施されている。
使用する医療機器の多くは、内視鏡やX線撮影装置に比べて安価で、特別な技能が不要であり、手軽に短時間で測定が行える。
測定結果は数値で表示されるため、健常者との比較や介入前後での比較が可能である。
測定結果は、訓練計画を立案する際の参考にしたり、訓練成果を検討したり、患者にフィードバックすることで訓練のモチベーション向上を図ったりといった活用が期待できる。
説明
測定結果は、性別や年齢の影響を受けやすいため、比較する対象者についてはこれらを考慮することが必要である。たとえば、女性患者の測定結果を男性健常者の測定結果と比較してはならない。
測定には患者の協力が必要なため、十分な協力が得られない患者では、測定結果がその患者の能力を反映していない可能性がある。
一回の検査時に2〜3回測定を行い、測定結果の信頼性を確認する。測定結果に大きなばらつきがある場合には、いずれかの測定時に指示された動作を行っていない可能性がある。
測定結果は、その能力の最大値を表しているに過ぎない。つまり、必ずしも「測定値が低い=嚥下障害」というわけではない。たとえば、舌圧の測定結果が健常者の平均値より低かったとしても、通常の食事を摂取するのに必要な力を満たしていれば、通常の食事を摂取することは可能である。ただし、その場合には「予備力」の低下が疑われる。
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予備力とは、ある機能の最大能力と平常な生活を営むのに必要な能力との差のこと。予備力が低下していると、平常以上の活動を必要とする場面で対処できない。たとえば、咬合力の予備力が低下していると、普段食べている食事は問題なくても、硬めの肉が提供されると噛み切れないといったことが生じる。
予備力が低下した者では、何らかの原因でさらに能力が低下する事態が生じると、常食摂取が困難になるおそれがある(図)。
説明
舌圧とは、舌を口蓋に押しつける力のことである。この力が弱いと、食塊形成や食塊移送が困難になるほか、嚥下中の嚥下圧の産生にも影響する可能性がある。
指示理解ができない場合、舌の指示動作ができない場合、プローブを挿入できない場合、プローブを保持できない場合には、適切な測定が行えない。
JMS 舌圧測定器®を用いた舌圧測定において、30 kPa未満が口腔機能低下症の一つの基準とされている1)。
説明
JMS 舌圧測定器®を用いた舌圧測定法を示します。
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舌骨上筋のうち顎舌骨筋と顎二腹筋は嚥下時に舌骨を上方に、オトガイ舌骨筋は舌骨を前方に移動させるときに働く2)。いずれも開口筋であるため、開口力を測定することで舌骨上筋群の機能が評価できる。指示理解ができない場合、指示動作ができない場合には適切な測定が行えない。また、顎関節に障害がある場合には、測定中に顎関節脱臼や痛みを生じる可能性があるため、測定すべきではない。
誤嚥のスクリーニングに開口力を用いた研究では、男性は3.2 kg以下(感度57%、特異度93%)、女性は4 kg以下(感度79%、特異度52%)であったと報告されている3)。
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開口力トレーナー®を用いた開口力測定法を示します。
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咬合力は食事を咬断、粉砕できるかどうかの判断基準となる。咬合力が低下すると、丸飲みや窒息の危険性が増すだけでなく、野菜、ビタミンA、C、B6、葉酸、食物繊維の摂取量が少なくなる可能性がある4)。
指示理解ができない場合、指示動作ができない場合、咬合する歯が無いには適切な測定ができない。また、くいしばると歯などに痛みがある場合には測定すべきではない。
デンタルプレスケール®による咬合力200N未満が口腔機能低下症の一つの基準とされている1)。
また、デンタルプレスケールII®においては、圧力フィルターなしでは500N、圧力フィルターありでは350Nを基準値とすることが提唱されている5)。
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デンタルプレスケールII®を用いた咬合力測定法を示します。
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咀嚼には咬断、粉砕、臼磨し、唾液と混和して嚥下しやすい食塊に形成する能力が必要とされる。しかし、これらの能力を個々に評価するのは困難であるため、グミゼリーやピーナッツを用いて咬断、粉砕する能力を見たり、咀嚼するほど色の変わるガムを用いて混和する能力を見たりすることで咀嚼機能を評価するのが一般的である。
指示理解ができない患者や咬合する歯が無い患者では、咀嚼せずに口腔内に保持したり、咀嚼せずに嚥下してしまう可能性があるため控えるべきである。
咀嚼能力検査システムにおけるグルコース濃度100mg/dL未満が口腔機能低下症の一つの基準とされている1)。
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グルコセンサー GS-II®を用いた咀嚼機能評価法を示します。
参考文献
- 一般社団法人 日本老年歯科医学会 学術委員会: 高齢期における口腔機能低下 ─学会見解論文 2016 年度版─, 老年歯学 31(2), 81-99, 2016.
- William G. Pearson Jr, Susan E. Langmore, Ann C. Zumwalt: Evaluating the structural properties of suprahyoid muscles and their potential for moving the hyoid, Dysphagia 26(4), 345-351, 2011.
- Hara K, Tohara H, Wada S, Iida T, Ueda K, Ansai T: Jaw-opening force test to screen for Dysphagia: preliminary results, Arch Phys Med Rehabil 95(5), 867-874, 2014.
- Inomata C, Ikebe K, Kagawa R, et al: Significance of occlusal force for dietary fibre and vitamin intakes in independently living 70-year-old Japanese:from SONIC Study, J. Dent 42, 556-564, 2014.
- Yasuhiro H, Koichiro M, Kazunori I, et al: Relationship between two pressure-sensitive films for testing reduced occlusal force in diagnostic criteria for oral hypofunction, Gerodontology, Online ahead of print.