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嚥下内視鏡検査は、習熟した術者が行うことにより、誤嚥・喉頭侵入、貯留などの多くの臨床上情報が得られ、訓練内容の決定や予後診断に絶大な威力を発揮する。ここでは、嚥下内視鏡検査の概要・必要物品・管理について解説する。
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嚥下内視鏡検査とは、内視鏡を経鼻的に挿入し、安静時、嚥下時の咽頭・喉頭を観察する検査であり、近年その有用性が再認識され、急速に広まりつつある検査である。嚥下内視鏡は、右上の赤い円で示す中・下咽頭を見下ろす視野であり、安静時には右下のような画像が観察される。一般には画面の下が前方(口腔)になる。
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嚥下内視鏡検査の目的は、大きくはスライドに示す6つである。重要なのは異常を見つけて経口摂取禁止にするのではなく、異常を見つけた場合は「どのようにすれば改善するか」まで提案できることが必要である。⑥は忘れられがちであるが、嚥下内視鏡の画像は分かりやすいため、患者・家族・スタッフへの教育指導に用いたときの効果は大きい。
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嚥下内視鏡検査の利点と欠点をスライドに示す。これらは嚥下造影検査と比べた利点と欠点になるが、やはり内視鏡の利点は、被曝なく長時間の検査ができ、かつ検査ユニットが小さいために持ち運びが可能という点であろう。一方、欠点はいくつかあるが、ある程度は技術でカバーできる。嚥下運動の瞬間が見えないという欠点は、嚥下直前と直後を注意深く観察することで十分に補える。食道期の観察は不可能であるが、準備期は嚥下直前の食塊を観察することである程度評価できる。また、不快感も術者が手技に習熟することで軽減できる。しかし、内視鏡の挿入角度のために気管後壁が見えないという点は技術ではカバーできない。とくにリクライニング位で検査した場合には、誤嚥物が気管後壁を流れていくことが多く観察が困難となる。
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嚥下内視鏡と嚥下造影検査の比較を示す。嚥下内視鏡は、被曝が無い、持ち運びが可能、実際の摂食時の評価が可能という点が、嚥下造影に勝る。反対に、食道の評価ができないというのは嚥下造影と比べたときの嚥下内視鏡の大きな欠点である。表では嚥下内視鏡で準備期、口腔期の評価が不可となっているが、近年の研究により、流れ込んでくる食塊を評価することにより、間接的に準備期、口腔期も評価できることが示されつつある。誤嚥の評価は、双方とも同程度に可能である。
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内視鏡には大きく分けて2種類ある。電子スコープは、画像が鮮明で拡大などの画像処理も可能であるが、ユニットが大きく高価なのが難点である。ファイバースコープは、画像精度が劣るもののユニットが小さいために機動性が高く、安価であるという点が特徴である。通常の嚥下内視鏡では、それほど高い画像精度が必要となることは少なく、ファイバースコープで十分対応できる。
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左はファイバースコープのユニットの1例を示す。Aはモニターであり術者が内視鏡を操作する時や、所見を供覧するときに必要となる。Bは光源であるが、咽頭腔は暗いため内視鏡検査には必須である。Cはカメラ(モジュレーター)であり、この先のカメラを接眼部に接続して画像を出力する。Dはマイク・ミキサーであり、検査場面の音声・指示を録音しておいた方が、あとから見直す時などに役に立つが必須ではない。Eは記録装置であり画像記録メディアであれば何でもよいが、携帯性を考えると小型のものを選択しておいた方が便利である。
右は 嚥下内視鏡(ファイバースコープ)である。シャフト部は、小児用には約2mmのものも存在するが、通常の嚥下内視鏡に用いるものは3~4mmである。
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内視鏡のシャフト部分は多数の光ファイバーが入っているため、丁寧に扱わないとシャフト内部でファイバーの断裂(画面上では黒点として現れる)が生じる。ファイバーは屈曲と伸展に弱いため、スライド左のようにシャフト部分を折り曲げたり、右のようにシャフト部分を引っ張ったりすると故障の原因となる。
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内視鏡で見られる画像の大きな特徴は、辺縁が歪んでいるという点である。したがって、画面の端に見えるものの形は実際の形とは異なって写っている。また、内視鏡の特性として、被写界深度が深く、対物レンズが観察物と離れても近づいても画像のピントが合う。すなわち、対物レンズが近づくと対象物は大きく見え、離れると小さく見えるため、周りの解剖学的なランドマークを指標にある程度の目安は分かるが、対象物の大きさを実寸で計測することはできない。貯留物にレンズが近づくと大量貯留に見えるが、離れるとそれほどの貯留ではないということに気付くこともある。
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内視鏡を施行するときは、術者のみではなく必ず複数名で行うことにより、緊急時の対応ができるようにしておく。また、スムースに検査を運ぶには、各種スイッチの切り替え、被検査者の抑制、検査食の提供などにも人員が必要である。
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シャフト部は乾燥していると鼻粘膜に疼痛を生じるため、水や口腔用の保湿剤を付けると比較的スムースに挿入できる。痛みをさらに軽減するには、キシロカインゼリーをシャフト部に付けてから挿入すると検査中の違和感が軽減できるが、大量に付けるとゼリーが咽頭に流れて咽頭感覚を麻酔してしまい正確な検査ができなくなるので注意が必要である。スプレータイプの麻酔は咽頭に流れる率が高いため嚥下内視鏡では使用しない方がよい。
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無色や透明度が高いと内視鏡で見えにくいので、検査用食品は色がついて透過性が低いものがよい。液体の検査のときは牛乳を用いると見えやすい。経口摂取をしている症例で、嚥下内視鏡検査を行う時は、検査用食品としてその症例が食べている食事段階の上と下を用意できていると、根拠をもった食事メニューの決定ができる。とろみ剤を準備しておくと、その場で検査用食品のとろみを調整できるので便利である。
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透明の食品で検査したいときは食用色素を用いるとよい。とくに水やお茶など色が薄く透明度が高いものを観察したいときには、着色は必須である。スライド下は等量のゼリーを摂取しているときの画像であるが、無色のゼリーは貯留が分かりにくい。右の着色したゼリーは喉頭蓋谷にゼリーが貯留しているのが容易に観察できる。着色する色は緑か青が、粘膜に同化しないために観察しやすい。尚、現在保険適用となっている内視鏡下嚥下機能検査には着色水を嚥下させた際の評価に対する点数となっていることに注意して行う。
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嚥下内視鏡検査は比較的安全な検査であるが、合併症がゼロというわけではない。代表的な合併症である神経原性ショック、鼻・咽頭出血、誤嚥などには対応できるような準備が必要である。また、現場での対応が不可能である時には、速やかに対応可能な科、医療機関の協力を仰げるようにしておく。
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消毒は普段の診療では簡易消毒で十分である。まず、酵素洗浄剤で鼻汁などのタンパク質を十分に洗い流し、そのあとでフタラール系の消毒剤に浸漬させるのが一般的である。ただ、接眼部等も汚染された場合には、ガス滅菌や専用の洗浄消毒機で消毒・滅菌する必要がある。シャフト部に処置用の孔があるタイプの内視鏡は、簡易消毒ではなく洗浄消毒機での消毒が必須である。
参考文献
- Langmore SE, Schatz K, Olson N: Fiberoptic endoscopic evaluation of swallowing safety: a new procedure. Dysphagia, 2: 216-219, 1988.
- Madden C, Fenton J, Hughes J, Timon C: Comparison between videofluoroscopy and milk-swallow endoscopy in the assessment of swallowing function. Clin Otolaryngol Allied Sci, 25: 504-506, 2000.
- Bastian RW: Videoendoscopic evaluation of patients with dysphagia: an adjunct to modified barium swallow. Otolaryngol Head Neck Surg, 104: 339-350, 1991.
- 佐々生康宏,野原幹司,小谷泰子,阪井丘芳:内視鏡による食塊形成機能の評価-健常有歯顎者を対象として-,老年歯科医学,23(1):42-49,2008.
- 野原幹司,佐々生康宏,小谷泰子,尾島麻希,阪井丘芳:摂食・嚥下障害の内視鏡による検査.歯科臨床研究,4:36-45,2007.
推薦図書
- 植松宏監修:訪問歯科診療ではじめる摂食・嚥下障害へのアプローチ,医歯薬出版,2007.
- 戸原玄編集企画:訪問で行う摂食・嚥下リハビリテーションのチームアプローチ,全日本病院出版会,2007.
- Langmore SE編著,藤島一郎監訳:嚥下障害の内視鏡検査と治療,医歯薬出版,2002.