38.口腔ケアの準備、歯の清掃法、必要器具・薬剤

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説明

口腔ケアを行う場合には、まず事前に対象者に関する情報収集が必要である。必要な情報とは、全身状態(原疾患、障害、意識状態、呼吸状態、栄養管理、服薬内容、姿勢、摂食嚥下障害の重症度など)、口腔内の状態(開口量、歯の本数、咬合状態、義歯の使用状況、疼痛、う蝕、歯肉の腫脹・発赤、口臭、口腔乾燥、舌苔、感覚異常の有無(味覚、触覚など)、咬反射の有無、舌の可動域など)である。

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説明

口腔ケアを行う前に、次のようなものを準備するとよい。清掃器具(歯ブラシ、歯間ブラシ、舌ブラシ、スポンジブラシなど)、吸引器(気管吸引の場合の吸引圧は最大で20kPa(150mmHg)で実施)、SpO2モニター、開口器、グローブ、ガーゼまたはティッシュ、ピンセットやデンタルミラー、コップとガーグルベイスン、タオル、含嗽剤や歯磨剤、口腔保湿剤などである。

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口腔ケアの実施に際しては、様々なリスクがあり、呼吸、循環系など全身に影響を及ぼす事があるのでので、十分な注意が必要である3,4)。さらに、摂食嚥下障害を有していれば自分の唾液を嚥下することすらできないケースも多い。不注意な口腔ケアによる、清掃器具の誤飲や窒息、汚染物の誤嚥による誤嚥性肺炎のリスクをかえって高めてしまう場合がある。また、口腔ケアが十分になされていない場合には、歯肉炎や歯周疾患に罹患している可能性は高く、口腔ケア時に歯肉出血をきたしやすくなる。全身的に肝機能低下、抗凝固薬の服薬などによる出血傾向、口腔粘膜の乾燥があれば、それらの出血はさらに容易におこり、かつ止血もより困難となるため事前の情報収集とその対応に注意が必要である。

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歯ブラシは、対象者の年齢、口腔内の状態に応じた選択が必要である。毛の硬さは、歯周疾患がある場合、高齢者には柔らかめを選択する。ヘッドの大きさは大臼歯1.5~2本ぐらいの長さで幅が狭いものがよい。動物の毛は、乾燥しにくく細菌が繁殖しやすいため避ける。握力が弱い場合などには、柄を太くするなどして、歯ブラシを持ちやすくする必要がある。

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歯ブラシの取り扱いについては、毛先が開いてしまったり(毛先がヘッドからはみ出して見える状態)、磨耗したものは清掃効果が減少するために交換が必要である。衛生面からみても、歯ブラシの交換は1日3回のブラッシングで約1か月が目安である。保管方法は、使用後は流水下で根元までしっかり洗い、よく水を切り、乾燥させる。植毛部を上にして、風通しのよい所で保管するようにするとよい。

スクラッビング法 バス法
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ブラッシングにはいくつかの操作方法があるが、清掃効果の期待できる代表的な2つの方法を紹介する。スクラッビング法は、歯ブラシの毛先を歯面に90°(垂直)に当て、小刻みに横磨きをする。バス法は、毛先を歯軸に対して45°に当てて、歯と歯肉の間に毛先を集中させた後に軽い圧迫とともに横磨きで微振動を加える。いずれの方法も、歯ブラシを当てる力は150~200g程度の力で、力が加わりすぎる場合にはペングリップで握り(鉛筆を持つように軽く握る)、小刻み(1~2mm幅)に、歯ブラシを動かすようにする。

臼歯部の遠心 臼歯部の近心
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説明

磨く部位別にもブラッシング方法の工夫が必要である。臼歯部の遠心では歯ブラシの“つま先”を使って小刻みにハブラシを動かす。臼歯部の近心では歯ブラシの“かかと”を使って小刻みにハブラシを動かす。前歯部の舌側は歯ブラシをたてて1本ずつかきだすように動かすようにするとよい。

前歯部の舌側
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磨く部位別にもブラッシング方法の工夫が必要である。臼歯部の遠心では歯ブラシの“つま先”を使って小刻みにハブラシを動かす。臼歯部の近心では歯ブラシの“かかと”を使って小刻みにハブラシを動かす。前歯部の舌側は歯ブラシをたてて1本ずつかきだすように動かすようにするとよい。

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電動歯ブラシの使用方法は、歯ブラシの毛先を軽く歯に当て、1か所を数秒磨いたら、歯ブラシを次の歯へとゆっくり移動させる。そのとき歯と歯肉の境目に沿って、角度を変えながら毛先の方向を常に移動させる。ヘッドを強く押しつけたり、同じ場所に長く当てすぎたりすると、歯や歯肉を傷つけることがあるので注意が必要である。電動歯ブラシは連続運動しているため、歯みがきの所要時間が短いと誤解されがちであるが、普通の歯ブラシと同じくらいの時間が必要である。

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含嗽(うがい)は口腔内を水や薬液により洗浄することであり、口腔内の清潔を保持し、口腔の粘膜疾患や術後感染の予防に有効である。うがいに使われる薬液のことを含嗽剤という。含嗽だけでは、歯の汚れ(プラーク)を除去することはできず、ブラッシングは必要であるが、その後のプラークの蓄積予防などの効果はみられる。主な含嗽剤の成分としては、塩化べンゼトニウム、ポピドンヨード、アズレンスルホン酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどがあげられる。

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歯間ブラシは、歯と歯そして歯肉の間の、三角形の空隙の清掃時に適している。歯列に沿った方向に出し入れを行い清掃する。歯間ブラシには、様々な柄のタイプがあるので自分の使用しやすいものを選択する。また、歯の隙間に合ったサイズを選択しないと、かえって歯肉を傷つけることがあるので注意が必要である。

交換時期は、歯ブラシと同様にブラシの毛が寝てきたら早めに交換する。ブラシの柄の部分が折れる事があるので注意が必要。

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デンタルフロス(以下、フロス)は歯間部の汚れを清掃するのに適しており、通常の歯ブラシでは毛先が到達しない部位の清掃が可能である。使用法は、まずフロスを約40cm程(指先からひじまで)の長さに切る。歯と歯の間に斜めにスライドさせながら、前後に動かして、歯肉溝までゆっくり静かに挿入する。フロスを歯面に沿わせ、上下に数回動かし、歯の側面を清掃する。清掃後は、静かにフロスを除去する。開口が保持できない場合は、使用が難しい。

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歯磨剤には、再石灰化、抗炎症、研磨、う蝕予防、知覚過敏緩和、保湿など成分によって効果が異なる。対象者の口腔内の状態を考慮して必要な効果を期待できる成分のものを選択する。う蝕歯が多いひとは高濃度フッ素配合(フッ素濃度1450ppm)のもの、歯周病を有している人は殺菌成分が含まれているもの、知覚過敏があるひとは知覚過敏用のものを選択したほうがよい。また、口腔内が泡で充満してしまうため、歯磨剤は毛先に少量つけることが望ましい。洗口できない場合には、洗口不要のものを選択し、最後にガーゼなどで飛散した汚物を清拭で回収する。

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義歯の着脱は適切に行わなければ、粘膜の損傷や義歯破損の原因となるので注意が必要である。清潔な口腔内に装着する、指や爪で行う、最後まで指で押し込むこと、クラスプ(バネの部分)を持って外すことなどに留意して着脱を行う。咬みこんで入れると、変形の原因となるので止めた方がよい。部分床義歯の場合、クラスプのかかる歯はよごれやすいために、清掃は入念に行わねばならない。また、両側にクラスプがある場合は、両側を平行に着脱しないとクラスプが変形する事がある。

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義歯も清掃を行わなければ、細菌のリザーバとなるため十分に清掃を行うべきである。毎食後と就寝前に外して、義歯専用ブラシや、古くなった歯ブラシを使って清掃するとよい。清掃中,義歯を落とすと破損の原因になるため注意する。義歯洗浄剤は使用した方がよいが、歯磨剤は中に研磨剤が入っていると義歯表面に細かい傷がつき、細菌繁殖の原因となるために使用しない方がよい。特にクラスプ(バネの部分)は汚れやすいので注意して清掃する。使用しないときは、乾燥による破折や変形などを防ぐため、水につけて保管するとよい。

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参考文献

  1. Yoneyama T., Yoshida M., Matsui T. and et al.: Oral care and Pheumonia. Lancet, 354:515,1999.
  2. 鈴木美保:歯科治療による高齢者の日常生活活動の改善-層別無作為化対照試験-.老年歯学,22:265-278,2007.
  3. 柴田享子,宮武光吉,長縄弥生,他:口腔ケアリスク管理をどう考えるか.デンタルハイジーン,27:714-721,2007.
  4. 藤井航:口腔ケアでの注意点は?.リハビリナース,2:212-213,2009.
  5. 一般社団法人日本口腔衛生学会:高齢者のオーラルセルフケアに関する学会提言.口腔衛生会誌 J Dent Hlth 67: 94–117, 2017.

推薦図書

  1. 植田耕一郎著:脳卒中患者の口腔ケア第2版.医歯薬出版,東京,2015.
  2. 晴山婦美子,塚本敦美,坂本まゆみ:看護に役立つ 口腔ケアテクニック.医歯薬出版,東京,2008.
  3. 布宮 伸,茂呂悦子:見てわかる医療スタッフのための痰の吸引基礎と技術.学研メディカル秀潤社,東京,2010.
  4. 日本歯科医師会監修,EBMに基づいた口腔ケアのために.医歯薬出版,東京,2002
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