説明
加齢に伴い食事摂取量が徐々に減少することが多く、たんぱくエネルギー栄養障害(protein energy malnutrition;PEM)を引き起こし、筋肉量および筋力の減少を生じる。食事摂取量減少は加齢による身体機能の低下のみでなく、脳血管障害や認知症、うつ傾向などの精神機能低下、さらに社会的要因など様々な要因がある。加齢に伴う筋肉量と筋力の減少はsarcopeniaと呼ばれるが、この一因は低栄養とされている。筋肉量・筋力の減少は転倒・外傷のリスクを高め、ADL・QOLも低下させる。ADLの低下はさらに活動性の低下をきたし、筋肉量・筋力を減少させるという悪循環に陥り、寝たきりの原因となることもある。これを回避するために身体計測をはじめとした栄養アセスメントを実施し、リスクのある高齢者に対しては積極的な栄養療法を適切に行う必要がある。
説明
現在一般的に栄養スクリーニングとして普及しているものに主観的包括的アセスメント(Subjective Global Assessment;SGA)がある。これは栄養状態を主観的にA:栄養状態良好、B:中等度の栄養不良、C:高度の栄養不良に分類する。 65歳以上の高齢者向けの評価としてはMNA®(Mini Nutritional Assessment)がある。MNA®には、Short FormとLong Formがあるが、本邦ではLong Formと同様の結果が得られる、より簡便なShort Formが普及している。6項目のスクリーニング14点満点で12点以上であれば栄養障害の危険なしと判断し、それ以下の場合は危険ありと判断される。身長が測れないなど、BMIの測定ができない場合は、BMIの代わりにふくらはぎの周囲長を測定して、評価することができる。また、身体計測も重要であり、BMI( 体重(kg)/身長(cm)2)が汎用される。
説明
日本人の食事摂取基準 2010年度版より
日本人は、男性では75歳以上、女性では80歳以上で栄養摂取量の減少が生じる。
説明
厚生労働省による日本人の食事摂取基準によれば、高齢者の推定エネルギー必要量は、男性で1850kcal/日以上、女性で1450kcal/日以上と、入院例と比較して高めの設定がされている。
説明
日本静脈経腸栄養学会静脈経腸栄養学会のガイドラインに示されている高齢者の栄養管理を示す。まだ、十分なエビデンスが得られていないのが現状である。
説明
サルコペニア、とは、sarco、つまり「肉」をpenia、「失う」という意味を持った言葉、筋肉量の減少をさす。
男性でサルコペニアの者は有意に過去一年間の転倒経験が多く、バランス機能やIADLが低下している、女性でははIADLが有意に低下することが報告されている。
サルコペニアの診断基準はDXA法で測定された四肢筋量を、身長の二乗で補正した四肢筋量指数(Skeletal Muscle Index: SMI)が用いられる。サルコペニア基準は18~40歳成人のSMI平均値の2SD以下とされ、65~70歳高齢者の13~24%、80歳以上の50%超が、該当するとされる。
サルコペニアは、「原発性サルコペニア」と、「二次性サルコペニア」に分けられます。高齢者では、性ホルモンの分泌が低下するほか、運動神経線維のうち、筋線維を支配し実際の筋収縮に関与するα運動ニューロンが加齢とともに約50%低下すること、また、筋の増殖に必要な骨格筋組織特異的幹細胞である筋衛星細胞も数が減少することなどが知られており、このような純粋に加齢による影響でおきたサルコペニアは、原発性サルコペニアとされる。一方、二次性サルコペニアには、廃用などの身体活動性低下や、疾病、低栄養に伴って起こるものなどがある。
説明
脳卒中急性期には、生理的ストレスや感染症の合併による、基礎代謝亢進と蛋白欠乏「クワシオルコル」の状態となり、さらに禁食が長期化すると慢性の栄養摂取不足「マラスムス」も加わり、マラスムス性クワシオルコル型のたんぱく質・エネルギー低栄養状態(PEM)に至りやすい。このため、早期から、カロリーだけでなく、蛋白質量にも配慮した栄養投与が必要である。必要カロリーは通常、身長、体重、性別、年齢からハリス・ベネディクト(Harris-Benedict)の式を用いて基礎エネルギー消費量(BEE)を求め、これに活動係数、ストレス係数を乗じて算出する。蛋白量は0.8~1.0g/kg/日を基本とし、感染症など代謝亢進の病態を有する場合には1.1~2.0g/kg/日の間で投与量を算出する。ただし、発症直後の禁飲食時に必要栄養量を投与することは、中心静脈栄養を用いない限り困難であり、静脈栄養と経腸栄養を併用しながら、できるだけ必要量に近づける。 なお、中心静脈栄養は敗血症のリスクもあり、消化管の使用が長期間不能な場合に考慮する。
静脈栄養のみの場合には、蛋白異化を生じさせないためには急性期においても概ね600kcal程度の栄養投与が必要とされる。可能であれば糖質のみならず、アミノ酸製剤を含んだ輸液の併用が望ましい。
説明
2005年のFOOD trialの報告では、経口摂取が困難と判断された症例については、末梢点滴で水分補給のみ行うより発症後1週間以内に経管栄養を開始した方が、6か月後の死亡率は低い傾向にあったが、有意差はなかったとしている。
PEG造設時期については、発症後7-10日までの「超急性期」からのPEG造設と経鼻栄養群を比べると、早期からのPEG造設群で死亡率が高く、機能予後も悪い傾向があったと報告しており、少なくとも急性期の段階でのPEG造設は行うべきではないと考えられる。一方、発症後1か月程度でのPEG造設群では、経鼻栄養群より栄養状態、生命予後良好との報告があり、症例ごとで摂食嚥下障害の重症度や経過を十分に判断した上で検討する必要がある。
説明
低栄養状態の脳卒中患者は死亡率、合併症の危険性が高く、自立度が低く、転帰先にも影響を与える。
説明
急性期-慢性期の低栄養に対し、栄養ゼリーなどのサプリメントを予防的に(栄養状態に関わりなく脳卒中急性期例全例に)与えることは、栄養状態、生命予後改善効果に乏しいとされている。一方で、低栄養群に対しては栄養介入効果の報告がある。低栄養患者を抽出したうえで、適切な栄養療法を行うNSTなどのシステムが脳卒中患者にも重要である。
説明
日本静脈経腸栄養学会静脈経腸栄養学会のガイドラインに示されている脳卒中患者の栄養管理を示す。一部の胃瘻関連を除けばまだ、十分なエビデンスは得られていない。
説明
脳卒中治療ガイドライン2021での、急性期の栄養管理についての推奨内容を抜粋して示す。脳卒中ガイドライン2015(追補2019)では、【脳卒中発症後7日以上十分な経口摂取が困難と判断された患者では、発症早期から経腸栄養を開始するように勧められる(グレードB)。】とされていたが、脳卒中治療ガイドライン2021では経腸栄養または中心静脈栄養を行うことは妥当であるとされた。
説明
回復期リハ病棟にも、20%程度、低アルブミン血症の患者が入院しており、積極的な栄養療法が望まれる。
説明
回復期リハ病棟にも、20%程度、低アルブミン血症の患者が入院しており、積極的な栄養療法が望まれる。BMIで評価するいわゆる“やせ”患者は健常者と比較して高齢者になるほど増加傾向にある。高齢者は食事摂取量が低下していることも多い。低栄養患者はリハビリを施行しても筋力増強効果が得られにくい。
説明
回復期リハ入院患者の低栄養患者は、発症まで比較的元気だった脳卒中患者より、病前に活動性低下が生じていた骨折患者や廃用患者が多い。このような例は筋萎縮も強く早期の栄養療法介入が必要である。一方、肥満例は、生活習慣病との関連から脳卒中例に多く、カロリー制限による減量プランがADL改善のためにも必要である。
説明
ハリスベネディクトの式を用いた基礎エネルギー消費量(BEE)推定は一般的であるが、現在の日本人に対しての検証は少ない。肥満例では, 実測値よりハリスベネディクトの式によるBEEが過大となることが報告されており、身体構成成分のばらつきの存在が要因としていわれている。ASPENのガイドラインでも、肥満例におけるエネルギー必要量の決定は間接熱量測定の方が有効であるとされている。一方、PEGを有する低活動高齢者でも、H-B式によるBEEを基にした栄養量投与を行うと、間接熱量計に基づく投与と比較して脂肪中心の体重増加が生じることが報告されており、筋委縮の影響が考察されている。肥満例や長期臥床例では、可能であるなら間接熱量計にて安静時エネルギー代謝を測定したほうが、より適切な栄養投与量を設定できる。
説明
脳卒中急性期や高齢者では、胃機能低下が生じている場合があり、経管栄養時に胃食道逆流がしばしば生じる。注入開始前にチューブを吸引して、前回の経腸栄養剤が引ける例では、胃排出能低下が疑われ、胃食道逆流による誤嚥性肺炎の危険が高く、注入量や速度を低下させる必要がある。痰の吸引などで、咽頭から経腸栄養が引ける例でも同様の対応を行う。
説明
胃瘻を造設しても、生存率は決して良好でないとの報告もある。この一因として写真に示すような胃食道逆流の存在が考えられる。
説明
禁食で長期間消化管を使用しなかった例や胃食道逆流が疑われる例では、注入速度を低下させる必要がある。なお、慢性期ではあるが、経腸栄養を自然滴下とポンプによる注入で比較した場合、ポンプ使用の方が嘔吐・誤嚥・肺炎が低下するとの報告もあり、施設にポンプがある場合には経腸栄養開始時はポンプ利用下で速度、量を調節した方がより安全であるかもしれない。
説明
半固形栄養は水より粘度が高いから逆流しないのではなく、生理的な食物を胃に入れることによって、胃に弛緩(適応弛緩)を生じさせ、さらに蠕動を生じさせる方法との認識にかわりつつある。
経胃的腸瘻や腸瘻は胃に栄養剤が入らないため、逆流のリスクは下がるが、短時間での注入はダンピング症候群を生じることが多いため、困難である。また、腸に栄養剤を注入しても胃酸は分泌するため、胃酸の誤嚥が生じることもある。最近ではダブルルーメンタイプ(2経路有するチューブを胃と腸に留置)を用いた経胃的腸瘻を利用して、胃側を開放しながら腸に栄養剤を注入する方法も報告されている。