78.栄養管理

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説明

小児では身体活動に必要なエネルギーに加えて、成長に伴うエネルギーを余分に摂取する必要がある。また最近、摂食嚥下障害児の栄養管理にもNutrition Support Team(NST)によるチーム医療の考え方が導入され1)、各職種の枠をこえて栄養状態を評価し、適切な栄養療法を提言・指導することが行われるようになりつつある。このため、1)摂食栄養障害児における栄養管理に関して標準的な知識を持ち、さらに2)栄養必要量の推定方法を理解する必要がある。

一方、重度の摂食嚥下障害を合併することが多い重症心身障害児(以後、重症児と略称)の場合、10歳過ぎてからも10数キロの体重でとどまっているものも少なからず認められ、健常児の一般的な栄養管理を適用するのは困難である。このためまず3)栄養評価の基本的な方法の知識を基礎として、4)重症児の栄養評価・身長、体重の計測方法について知っておく必要がある。

重症児の場合、さらに感染の反復、意欲の低下、嘔吐、湿疹などの症状が、基礎疾患からくるものと判断され、栄養との関連が見過ごされやすい。特に感染症後などは、低栄養状態になりやすいが、同時に嚥下能力自体も低下していることが多いので、栄養摂取の方法・食物形態に注意を払う必要がある。このためには、5)重症児の栄養管理における特異的な留意点を知っておく必要がある。

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説明

小児では、成人と共通する身体活動に必要なエネルギーに加えて、成長しなければならないためエネルギー蓄積量、すなわち成長に伴う組織増加分のエネルギー、さらにその組織を合成するためのエネルギーが必要になる。 便宜上、組織合成に要するエネルギーは、総エネルギー消費量の中に加わるので、最終的に推定エネルギー消費量は総エネルギー消費量+エネルギー蓄積量という形で表され、これは成長の推移(急進. 停止etc。)に伴い変化する。つまり、成長に伴い体組織の増加が起こることによって、エネルギー消費も変化する。

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説明

日本人の食事摂取基準(2015年版)2)における各年代の推定エネルギー必要量を示した。成長の推移に伴って、必要エネルギー量が変化していくことがわかる。身体活動のレベルはI, II, IIIの3段階に設定されている。これに関しては、次のスライドで解説する。

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説明

日本人の食事摂取基準(2015年版)における身体活動レベルの設定内容を示した。エネルギー消費は身体活動のレベルによっても変化するため、表に示したように、基礎代謝に対する割合で、必要エネルギー量が設定されている。基礎代謝とは、何もせずじっとしていても、生命活動を維持するために生体で自動的に(生理的に)行われている活動で必要とされるエネルギーのことである。食事摂取基準を作って行く上での基盤となるデータに基礎代謝が使われているため、このような設定となっている。健常児の場合は基礎代謝の1.7から1.8倍(成人のレベルII)とされており、さらに年齢とともに増加するとされている。障害児の場合、歩行可能な場合、あるいはいざり移動など歩行に近いエネルギー消費が予想される場合は健常児と同等3)とされ、一方、逆に重症児ではエネルギー消費量が少ないとされていおり、スライドに示した倍率で推定するのが良いと考えられる。

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説明

タンパク質の必要量
6ヶ月までの乳児に必要なタンパク質量は、正常に発育した乳児が摂取していた母乳のタンパク質量から算出される。タンパク質必要量は、母乳の方が腸管での取り込みが良いため、人工乳に比べて少ない量に設定されている。摂取したタンパク質が効率よく利用されるためには、十分なエネルギー量が必要となる。

脂質の必要量
母乳栄養児は総エネルギーの45~50%を脂質からとっている。市販のミルク組成も脂質のエネルギー比率を母乳と同等にしている。リノール酸、アラキドン酸、リノレン酸は必須脂肪酸であり、これらが欠乏すると身体・脳の発育障害をきたす。必須脂肪酸欠乏症をきたさないための必要量は、総エネルギーの3%以上とされている。

炭水化物の必要量
炭水化物の必要量は、総エネルギー必要量およびタンパク必要量と脂質比率から、炭水化物1g は4kcal、タンパク質1gは4kcal、脂質1gは9kcalとして計算する。

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説明

しかし、嚥下摂食障害を合併する重症児では、年齢・身長・体重から推定した基礎代謝量には、しばしば誤差があり、推定が困難である。このため個別の対応が必要となってくる。一般的に重症児では、基礎代謝量が健常児の85%程度とされ。また脳性麻痺の麻痺型別ではアテトーゼ型が100%, 痙直型では69%であったという報告がある4)。また口分田は、高エネルギー消費ないし低エネルギー消費になりやすい類型について表のようにまとめている5)

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説明

ここで、基礎代謝の推定値の出し方を解説する。一般的には基礎代謝量=基礎代謝基準値×体重(kg)として計算するが、基礎代謝基準値は、「日本人の栄養所要量、第六次改訂」6)から、表のように示されている。これを使って計算すると、例えば11歳の男児で体重24kgの場合では、37.4×24=898kcalとなる。ただし、基礎代謝の大部分は体温を維持するための熱産生に使われており、熱は体表面から放散されるため、体重よりは体表面積とより相関 すると考えられる。実際、身長のデータを加えて、体表面積から基礎代謝を計算する方法もあるが重症児の場合は、側弯や変形。拘縮があり、身長の計測が難しい。

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説明

そこで重症児の必要栄養量の管理に関しては推定される基礎代謝量の1.5倍程度を基準として、栄養指標・体重などの推移を見ながら、個々の症例において調節するのが実際的ということになる。ただし、経管栄養児では、基礎代謝と同等の栄養摂取でも十分なことが多い。管理中に栄養指標以外に注意を払う点としては、体重増加不良、体重減少、顔色不良、活動性低下、食欲不振、眠気、浮腫、便通異常、皮膚炎、出血傾向などがあげられる。もちろん総エネルギー量のほか、栄養成分毎の摂取量も確認する必要がある。経管栄養の場合は、栄養剤の選択により、タンパク質、脂質、電解質、ビタミン、食物繊維、微量金属などが不足する恐れがある。特に栄養剤は1000kcalを目安に微量栄養素を調整してあるものが多く、摂取カロリーをそれ以下に設定する場合は、微量元素・ビタミンなどが不足する可能性が高くなる。微量栄養素の不足に関しては、経口で栄養を摂取している場合は、食物で補充するのが原則だが、経腸栄養の場合ブイ・クレスα(ニュートリー)、テゾン(テルモ)などの栄養補充剤を利用しても良い。

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説明

亜鉛・銅・セレン・ビタミンK・ビオチン・長鎖脂肪酸・食物繊維など、経管栄養時の欠乏に注意すべき栄養素を示した。この他にも、マンガン・ヨード・ビタミンB2・カルチニン・鉄などの欠乏にも注意を払うべきである。

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説明

栄養の管理と同等か、それ以上に小児の場合は水分の管理が重要となる。生体内の水分量は、成人が体重の50~60%であるのに対して、乳幼児では70~80%と比率が大きい。またエネルギー1kcal産生には1mlの水が必要で、小児では体重1kgあたりのエネルギー必要量が大きい。さらに乳幼児では体重に対する体表面積が大きく。皮膚温も高いので。不感蒸泄量が多く、水分および電解質の変動が大きくなる。管理にあたっては、成人より水分必要量の許容範囲が小さいので注意を要する。嘔吐や下痢による水分・電解質の喪失および経口摂取量が不足すると容易に水分が不足し、その状況が続くとスライドに示したように脱水状態となる。
またスライドとは逆に、腎不全・心不全など尿量が減少する病態では、逆に水分が過剰になりやすく、浮腫が起こる。栄養状態の悪化に伴う低タンパク血症でも浮腫が起こる。

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説明

身長および体重の成長状態による栄養評価では、乳幼児の場合は、スライドに示したように、平成22年乳幼児発育調査報告書(下記website)に基づき評価する。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/73-22-01.pdf
各年齢層の10パーセントタイル未満、90パーセントタイル以上が問題となり、10パーセントタイル未満を低栄養と考える。低出生体重児の場合、乳幼児身体発育基準値から乖離する傾向があり、3歳までは修正月齢で評価する。
学童思春期では、平成29年度学校保健統計調査(下記website)に基づき評価する。この場合、平均ー標準偏差以下であれば低栄養と考える。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/03/26/1399281_03_1.pdf
摂食嚥下障害児の場合は、脳自体の障害に伴う成長障害、栄養摂取量の不足などから、上記の指標をもとにするのは困難である。このため、経時的な体重・身長などの成長指標を評価して、停止・減少が起こった場合に対処する。もちろん肥満に対するケアも必要である。

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説明

女児では10歳頃、男児では12歳頃から成長急進期を迎え、重症児では側弯・変形・拘縮が著しくなり、通常の方法で頭頂から足底までの直線距離を測定するのは困難となる。このため、変形した体軸の長さを測るために以下のような方法が用いられる7)
石原式:臥位で身体の側面(頭頂─乳様突起─大転子─膝関節外側中央点─外果─足底踵部)を計測する。
三分割法:斜頚・側弯を考慮した測定方法で、(A)頭頂─第7頸椎棘突起間の距離、(B)第7頸椎棘突起─Jacobyの線(腸骨稜上縁)間の脊柱の長さ、(C)腸骨稜─足底間の下肢長をそれぞれ計測する。
重症児の体重測定には健常者用の立位式の体重計や乳児体重計をそのまま使用するのが困難である。このため便宜的には、介助者が児を抱いたまま体重を測定し、その値から介助者の体重を減算する方法が用いられる。合計が100kgを超える場合は、体重計を二つ使い、介助者は左右の足を別な体重計に載せて計測する。

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説明

身長と体重の二つの指標から栄養状態を表す代表的なものがKaup指数であり、体重(kg)÷身長2(m)で算出する。Body mass index (BMI)とも呼ばれるが、年代毎に標準値が変化する。栄養指標としては、主に乳児期に用いられるが、生後3ヶ月以降の乳児では、16~18が「正常」、15以下が「やせ傾向」、18以上が「肥満傾向」とされる。その他に、学童期の肥満度を検出するためにRohrer指数(=体重(kg)÷身長3(m)×10)が用いられることもある。
生化学検査の代表的なものとしては、血清アルブミンがあり、タンパク質のレベルによる栄養評価に使われている。半減期が17~23日と長いため、急性栄養障害の評価に向いていないとされている。外科的な手術前後など、急激な栄養状態の変化が起こっている場合は、プレアルブミン、トランスフェリン、レチノール結合タンパクなどRTP (Rapid turnover protein)と呼ばれる代謝機転が早い血清タンパクが用いられるようになっている。これらの指標は半減期が短いため、アルブミンより鋭敏に反応するとされている。
その他にC反応性タンパク(CRP)は、一般的に使われている炎症反応指標だが、異化亢進の指標ともなり、プレアルブミンと逆相関する。また成人で良く使われる総リンパ球数(TLC)は栄養状態と免疫能と強く相関するとされているが、小児の場合は個人差が大きく、成人と同様には論じることができない。

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説明

2008年に脳性麻痺児の重症度別のBMIが報告されている8)。BMIのパーセンタイルは合衆国のCDCの年齢および性別に準拠した標準値を用いてある。CP児全体で、その29.1%が過体重(95パーセンタイル以上)または過体重のリスクがある(85-95パーセンタイル)とされている。移動能力のある子どもの集団の体重は過体重ないし過少体重に偏った双峰性の分布を示し、移動能力がない子どもでは過少体重を示す子どもが多かった(p<0.01)と報告されている。移動能力のない子どもで過少体重の子どもが標準的な集団より多いことに、嚥下障害の程度が関係していると推察される。

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説明

栄養管理の側面から嚥下障害児への対応をフローチャートに示した。嚥下障害の背景要因となっている病歴のチェックに加えて、好き嫌いを含めた摂食歴の聴取がまず必要である。特に摂取栄養量に関しては、嚥下障害児を専門とする栄養士による7日間の食事調査が望ましいが、最近では、3日間の食物日記(food diary)でも一定の正確さで摂取栄養の推定が可能となっている9)。筋量の減少および微量栄養素不足の徴候が無いかを確認することに加えて、今回示したような身体計測を行い、基礎代謝量の推定を行う。最近はインピーダンス法を用いた身体組成の計測(bioelectrical impedance analysis:BIA)も可能となっており、より簡便で正確な基礎代謝量の推定が可能となりつつある10)。微量栄養素不足の徴候があれば、補充を行った上で定期的な評価を行う。必要エネルギー量が摂取されていない場合は、単純に食物量を増やすのではなく、まず詳細な嚥下評価を行い、食物形態の調整を行って十分な栄養が確保される可能性があれば、食事のおいしさ・楽しさと発達段階を考慮した食物形態での摂取エネルギー増量を行った後に定期的に栄養評価を行う。そうでない場合は経管栄養を考慮する。

最後に嚥下障害の態様および栄養状態は栄養管理において最も重要な課題であるが、それと同時に、食事のおいしさ・楽しさとそれを通じた家族のインターアクションも子どもの発達にとって非常に重要であることを強調したい。

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参考文献

  1. Soylu OB, Unalp A, Uran N et al.: Effect of nutritional support in children with spastic quadriplegia. Pediatric Neurology. 39:330-334, 2008.
  2. 菱田明:厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準(2015年版).佐々木敏(監修)第一出版株式会社、東京、2014
  3. Walker JL, Bell KL, Boyd RN, et al. Energy requirements in preschool-age children with cerebral palsy. Am J Clin Nutr. 2012; 96: 1309-1315. doi: 10.3945/ajcn.112.043430.
  4. 永井庸次、岩岡浩子、岩崎信明、他:障害児の肥満とやせ、小児医学、25: 921-937, 1990.
  5. 口分田政夫:発達障害児の嚥下と栄養の課題、障害児の摂食・嚥下・呼吸リハビリテーション─その基礎と実践─、金子芳洋 監修、医歯薬出版、pp238-246, 2005
  6. 健康・栄養情報研究会:第六次改訂 日本人の栄養所要量 食事摂取基準.第一出版株式会社、東京、1999
  7. 竹下生子:栄養評価法、重症心身障害児の栄養管理マニュアル、中村博士、田花利男 監修、日本小児医事出版社、pp31-36, 1996
  8. Hurvitz EA, et al.: Body mass index measures in children with cerebral palsy related gross motor function classification. A clinic-based study. Am J Phys Med Rehabil. 87: 395-403 2008
  9. Walker JL, Bell KL, Boyd RN, et al. Validation of a modified three-day weighed food record for measuring energy intake in preschool-aged children with cerebral palsy Clin Nutr. 2013; 32: 426-31. doi: 10.1016/j.clnu.2012.09.005.
  10. Oeffinger DJ, Gurka MJ, Kuperminc M,et al. Accuracy of skinfold and bioelectrical impedance assessments of body fat percentage in ambulatory individuals with cerebral palsy. Dev Med Child Neurol. 2014; 56: 475-481. doi: 10.1111/dmcn.12342.
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