14.誤嚥への対応法:体位ドレナージ・スクイージング・ハフィング

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説明

このコンテンツでは誤嚥への対処法としてよく使われる体位ドレナージ、スクイージング、ハフィングを中心に解説します、いずれも呼吸リハビリテーションにおける基本的手技です。

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説明

比較的末梢の気管支までの誤嚥に対しては、体位ドレナージ、スクイージングなどを用います。一方、比較的中枢の気道までの誤嚥に対しては、咳やハフィングなどといった使い分けをします。

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説明

誤嚥物は空気より重いため、肺内に誤嚥物が溜まったときには重力によって体の下側に貯留します(下側肺障害)。体位ドレナージとは特定の体位を取ることによって誤嚥物の排出を促す手技です。実際には、誤嚥物の貯留部位を上側にします。頭を低くする頭低位を取れば排出できそうですが、最近は頭低位にはしないのが一般的です。まず、頭蓋内圧亢進や心不全がある場合には頭を高くする必要があるので、頭低位は禁忌になります。それ以外の場合でも、頭低位は患者が苦しい姿勢ですから、なるべく避けるようにします。

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説明

現在、スクイージングは介助による排痰法の中で最も効果的な手技とされています。その適応は痰や誤嚥物の貯留、浅い呼吸、胸郭可動域が少ないときです。肋骨骨折や不整脈があるとき、手術創の位置には注意して下さい。スクイージングによって比較的末梢の気管支の痰や誤嚥物を移動させることができます。手技は、目的とする肺野の位置する胸郭に手掌を置いて、呼気の間に胸郭の動きに合わせて軽く圧迫します。スクイージングを行う時には必ず体位ドレナージと組み合わせて用いるようにして下さい。

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説明

胸郭は上部と下部で異なる動きをとります。上部は前後に動きますが、下部では内外側に動きます。実際に自分で深呼吸をして確認してみて下さい。スクイージングを行う時には、胸郭の動きに合わせて軽く圧迫しますが、熟練者では胸郭の動きを誘導して呼吸をコントロールすることができます。

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説明

仰臥位で行います。第4肋骨より上部の胸郭に軽く手を置きます。呼気の最初には軽く圧迫し、徐々に圧を強くします。

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説明

右肺では中葉、左肺では舌区のスクイージングです。体位は仰臥位と側臥位の中間位です。第4肋骨と第6肋骨に挟まれた部分に手を置きます。

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説明

側臥位で行います。中腋窩線と第8肋骨の交点よりも上部に手を置きます。

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下葉肺底区のスクイージングでは、側臥位と腹臥位の中間位、いわゆる3/4腹臥位で行います。背側の手は第10肋骨より上部に、側胸部の手は中腋窩線と第8肋骨の交点よりも上部に置きます。

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説明

比較的中枢の気道に貯留する痰や誤嚥物に対しては咳やハフィングが有効です。咳では声帯は閉じますが、ハフィングでは声帯を開いたまま、「ハー」と強く息を吐きます。

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説明

吸気後に「ハッハッ」と息を吐く手技を強制呼出手技といい、この手技も比較的中枢の気道に貯留する痰や誤嚥物に対して用いられます。

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説明

気管は第5胸椎の高さで左右の主気管支に分岐しますが、分岐角が右25°、左45°と違うため、痰や誤嚥物は右側に入りやすいという特徴があります。嚥下造影検査終了直後に胸部X線撮影を行い、誤嚥した症例のバリウム残留位置を確認したところ、気管支までにバリウムが既に侵入していることが多く、やはり、右気管支に入っていることが多いという結果でした。誤嚥した部位が不明の場合には、右気管支を疑った方がよいでしょう。

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説明

誤嚥をしてもSpO2は必ずしも低下しません。ただし、SpO2が低下したときには、大量の誤嚥や相対的に誤嚥量が多かった場合、肺疾患や心疾患などの併存、または医学的に不安定な状態を疑う必要があります。したがって、SpO2が変化なくても誤嚥していないとはいえませんが、SpO2が低下した場合にはリスクが高い状態であるという認識が必要です。

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参考文献

  1. 加賀谷 斉:摂食・嚥下障害に対する呼吸リハビリテーションの適用, 日呼ケアリハ学誌, 21(1): 9-12. 2011.
  2. 宮川哲夫:動画でわかるスクイージング. 安全で効果的に行う排痰のテクニック.中山書店, 東京, 2005.
  3. 田中 貴志、 加賀谷 斉、 横山 通夫、 他:嚥下造影検査後の早期呼吸器合併症についての検討, Jpn J Rehabil Med, 47(5): 320-323, 2010.
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