15.窒息・嘔吐への対処法

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説明

気の通り道である気道のいずれか(おもに上気道)に食物や嘔吐物などの異物が詰まって閉塞をきたすことを「異物による気道閉塞」といい、完全な気道閉塞によって換気ができなくなり、ガス交換障害によって低酸素血症を生じて身体の臓器に機能障害を起こした状態を「窒息」という。重篤または完全な気道閉塞は、直ちに治療しなければ死に至る緊急事態である。 部分的な気道閉塞では咳嗽、喘鳴などの症状が見られるが、完全な気道閉塞では発声が不可能となり、喉のあたりを両手でつかんだり、かきむしるような動作(チョークサイン)を示すこともある。顔面蒼白(チアノーゼ)さらには徐々に呼吸が減弱して、痙攣や意識消失をきたす。 咳嗽機能や摂食嚥下能力が低下している高齢者などでは、胃内容物の嘔吐やパンや肉、餅などの摂食によって気道閉塞のリスクが高く、注意が必要である。

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説明

気道閉塞は成人の場合通常、食事中に発生する。明らかな理由もなく突然に呼吸困難に陥ったり、チアノーゼや意識消失をきたした場合には異物による気道閉塞を疑う。 ①部分的な気道閉塞:積極的な咳嗽と呼吸努力を促すとともに、医療者は傍らに付き添い、状態を監視するとともに、大声で応援を要請するとともに、救急システム(各施設の取り決めに準じる)に通報、場合によっては吸引による除去も試みる。 ②完全な気道閉塞(窒息):即座に呼吸不可能となる。そのサインは会話不可能、微弱で効果のない咳嗽、甲高い吸気音(あるいは吸気努力に際して音が出ない)、顔面のチアノーゼ、チョークサインの出現である。即座に対応しなければ対象者は反応しなくなり、急速に死に至る。

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説明

窒息が疑われる場合、対象者に喉が詰まっているかを問いかけ、うなずいたならば会話が可能かを確認し、話せない状況であったら窒息と判明、直ちに気道異物除去による気道閉塞の解除を試みる。同時に大声で応援を要請するとともに、救急システム(各施設の取り決めに準じる)に通報、対象者の応答、意識がなくなるまで腹部突き上げ法(ハイムリック法)や背部叩打法を実施する。 ハイムリック法は横隔膜を押し上げることによって、肺からの呼気を強める。これが人工的な咳嗽となって異物を気道から排出させることになる。 上記に加えて、(反応のない対象者では)舌-下顎引き上げ法により気道を確保し、気道内を観察した上で、指掻き出し法で気道異物の除去を試みる。続いて呼気吹き込みを行う。 これらは、一次および二次救命処置の有資格者が行うべきである。

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説明

窒息の対処法として以下の2つがある。

・ハイムリック法(写真1、 2) 介助者は右手の拳を握り、患者さんのみぞおちに右手を置き、両手を添えて下から上へ腹部を勢いよく圧迫して腹圧をあげ、胸腔の圧をかけることにより、強い呼気をおこして吐き出させる。

・背部叩打法(写真3~7) 介助者は患者のやや後方から、片手で患者の胸もしくは下顎を支えて、うつむかせる。<※患者が倒れている場合は、患者を手前に引き起こして横向きにし、介助者の下肢で患者の胸を支え、片手で患者の顔を支える。>もう一方の掌をカップ状にして、患者の左右の肩甲骨の間を強く叩く。

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ハイムリック法(写真1)

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ハイムリック法(写真2)

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背部叩打法(写真3)

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背部叩打法(写真4)

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背部叩打法(写真5)

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背部叩打法(写真6)

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背部叩打法(写真7)

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説明

摂食嚥下障害患者では、食道蠕動運動の低下などによって、しばしば胃食道逆流による嘔吐が生じることがある。嘔吐物による窒息や誤嚥の危険性もあり、嘔吐の際には以下に従って対応する。
・背中をさすって吐かせる。
・口腔内の食物残渣を出す。
・吸引する。吸引機などの医療器具が無い場合はガーゼなどを使い口腔内の食物残渣をかき出す。
・衣服をゆるめる。
・パルスオキシメータを装着し、酸素化を評価、SpO2<90%であれば酸素投与を開始する。
・吐物は手早く片づけ、水で口腔内をうがいする。
・吐物が周囲にあると、また嘔気を誘うので、速やかに片付ける 。
・吐物で誤嚥しないよう、顔を横向き、体は横向き又は上向きで下半身を軽く曲げお腹を楽にさせて寝かせる。
・吐物は、あとで医師に見せる ためにとっておく。
・再び吐く可能性があるので、洗面器を用意しておく 。
・反復する嘔吐や神経脱落症状(意識障害、麻痺)、頭痛、めまい等があれば、すぐに救急車を呼ぶ。
・誤嚥が疑われる場合には咳嗽やハフィングなど理学療法によって排出を試みる。吸引も実施可能であるが、吸引刺激によってさらに嘔吐をきたす場合があり、十分な注意を払う必要がある。

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嘔吐の対処法(写真8)

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嘔吐の対処法(写真9)

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参考文献・参考図書

  1. American Heart Association: BLSヘルスケアプロバイダー受講者マニュアル AHAガイドライン2010準拠.シナジー、2011.
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