32.検査の実際・合併症とその対策(嚥下造影検査)

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説明

嚥下造影検査は外からは見えない嚥下運動、食塊の動きを可視化できるため、嚥下障害の要因の評価、対策を決める上で非常に有用な検査である。
しかしその方法には統一性が欠け、的確な評価がなされていない場合もある。
ここでは、嚥下造影検査の標準的手段と合併症および対策について解説する。

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説明

どのような目的のために検査を行うのか、検査の実際の方法を説明し、理解、同意を得ることが必要。検査を受けることにより、摂食の安全性を評価できることを伝えると安心して検査に同意してもらえる。

経口摂取を長期間行っていない患者では、検査までの間に評価と間接訓練を実施することが望ましい。

検査室で緊張している状態では正確な評価ができないばかりか、平常よりも誤嚥する危険性が高い。検査前から顔見知りになり、意志の疎通を図り、検査室では準備体操として肩と頸部の力を抜いて軽い運動をさせるのもよい。

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説明

安全な検査ではあるが、患者のモニターとして脈拍と経皮的酸素飽和度を測定しながら検査を行うことが望ましい。

誤嚥や咽頭残留に対応するために、吸引器は常に使用可能な状態にしておく。

感染対策として検査者は患者毎に新しいゴム手袋を使用する。

模擬食品は検査の目的に応じて、あらかじめよく考えて準備する。

経鼻胃管チューブやバルーンカテーテルも常に対応できるように準備しておくとよい。

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説明

対象者の嚥下障害の原因が何か、また改善が見込める疾患か否かにより検査の進め方も異なるため検査前に把握しておく必要がある。

摂食に伴う肺炎の既往や長期間絶食にある患者では特に誤嚥に対する注意が必要である。依頼者(主治医、担当訓練士)の要求する検査目的を明らかにし、適切な検査を心がける。

検査当日に意識障害や全身状態の悪化がある場合は検査を中止する。

口腔ケアはあらかじめ念入りに行ってあることが必要で、検査当日に口腔内汚染が高度の場合は、検査を中止するかその場で口腔ケアを実施してから検査を行う。

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説明

照射野は口腔、咽頭、喉頭領域すべてを含むように調整する。管球と被写体の距離を十分とることで、拡大率も低下し、十分な照射野とより鮮明な画像が得られる。

まず側面での評価から開始し、続いて正面像を評価する。その際に食道の中、下部の蠕動や食塊残留の有無も確認する。

照射のタイミングは食塊を口腔に取り込むところから嚥下反射が終了し喉頭が安静位に戻るまでとするが、嚥下反射がなかなかおこらない場合は一旦照射をやめ、口頭での促しや嚥下促通手技を実施し、嚥下反射惹起のタイミングを見計らって照射を再開する。

総照射時間は5分以内が望ましい。

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説明

検査開始時の患者体位は普段摂食している姿勢を基本とする。

長期にわたり経口摂取を中止している場合には30度仰臥位、頸部前屈位から開始し、安全を確かめながら徐々に角度を上げていく。また、検査開始時に空嚥下の評価を行い、咽頭収縮・喉頭挙上・喉頭閉鎖の不良があり垂直座位で誤嚥が予測される場合はリクライニング位に調整する。

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説明

経鼻経管栄養チューブは、その太さ・走行経路によって嚥下運動の阻害となることがあるため、最良の嚥下を評価するためには抜去して検査を行う必要がある。

ただし、経鼻経管栄養チューブを留置したまま直接訓練を開始する必要のある場合には、チューブの影響をふまえて摂食の安全性を評価する必要があるため、抜去せずに検査を行う。検査中に一旦チューブを抜去したら、適正な太さのチューブを再挿入し、チューブの走行、深さを透視下で確認することが望ましい。

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説明

カフ無しのカニューレの場合は可能であればスピーチバルブや栓をして検査を行うため、検査前に閉鎖可能か評価をしておく。

カフ付きカニューレの場合は、検査前にカフ上の分泌物を吸引して除去して検査を行う。

検査前に、カフの脱気をしても呼吸苦やSpO2の低下がないか、スピーチバルブや栓の装着が可能かを評価しておき、可能であればその状態で嚥下機能を評価する。

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説明

初回の検査では、まず造影剤を用いない状態で発声、空嚥下を指示し口腔、舌、咽頭・口頭の動きの評価を行う。次に造影剤を用いて側面像、正面像でおおまかな特徴をつかんだ後、再度側面像にもどり代償方法を取り入れた詳細な評価を行う。正面像では咽頭収縮・食塊通過の左右差の評価とともに食道蠕動や食道残留の評価も行う。

2回目以降、特定の代償方法を再評価する場合はこの限りではない。

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説明

検査は安全なものから開始し、段階的に難易度を上げていくことが、誤嚥を最小量とするためには必要である。複数の要素を同時に変えるのではなく、食形態→一口量→姿勢のように1要素ずつ変えて、その効果を判定する。

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説明

「命令嚥下」と「咀嚼嚥下」はまったく異なる動態を示す。普段の摂食時と嚥下造影検査の結果の乖離を最小限とするためにも、嚥下造影検査時に咀嚼負荷嚥下法を実施することが推奨される。規格化された方法としては半固形物(コンビーフにバリウムを練り込んだもの)4gと液体バリウム5ccを同時に口に含み、咀嚼して嚥下することを指示する方法1、2)がある。半固形物は米飯やクッキーなどで代用可能で、しっかりと咀嚼しながら嚥下する時の、嚥下反射惹起時の食塊先端の到達位置や誤嚥の有無を評価する。

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説明

検査中に行う代償手段として姿勢調整の方法を示した。

次項に示す随意的嚥下法と組み合わせて、誤嚥や咽頭残留の少ない最良の嚥下手段を検討する。

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説明

検査中に行う代償手段として随意的嚥下法を示す。効果を確認し、直接訓練および食事に反映させる。

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説明

誤嚥を認めたら、即検査を中止するのではなく、生じた誤嚥に対して適切に対応した上で、全身状態に問題がなければ誤嚥を防ぐ代償手段の検討を行う。

誤嚥が生じたのと同一条件での検査の繰り返しは避ける。誤嚥物の喀出には咳嗽力が重要で、検査前から理学療法にて呼吸・咳嗽の訓練を実施する、誤嚥量が多い場合は体位排痰ドレナージを実施することが有効である。

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説明

当検査の合併症としては主に造影剤によるものがある。

一般的に用いられる硫酸バリウムは不溶性であり、人体に対する有害性は少ないといわれているが、高齢者や消化管運動の低下した例ではイレウスの発症3)が、大量の誤嚥では肺炎や肉芽腫発症の可能性4)が言われており、それぞれ注意深い観察と検査の実施が必要である。誤嚥量が多いと予想される症例や小児では、できるだけ侵襲を少なくするように水溶性の非イオン性造影剤の使用を検討する。

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参考文献

  1. 武田斉子,才藤栄一,松尾浩一郎,馬場尊,藤井航,Jeffery B PALMER:咀嚼が食塊の咽頭進入に及ぼす影響,リハ医学,39(6):322-330,2002
  2. 横山通夫:咀嚼負荷嚥下法,Modern Physician, 26(1):42-45,2006
  3. 田上鑛一郎ほか:外科, 52(4), 410-411, 1990
  4. 和田勝則ほか:日本消化器病学会雑誌, 79(10), 2035, 1982

推薦図書

  1. 才藤栄一,向井美惠監修:摂食・嚥下リハビリテーション,第2版,医歯薬出版
  2. 馬場尊,才藤栄一編集:摂食・嚥下障害リハビリテーション,医歯薬出版
  3. Logemann,J.A.:Evaluation and treatment of swallowing disorders,2nd ed.,Pro-Ed,Austin Texas,1998
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