50.直接訓練の概念・開始基準・中止基準

1/14

説明

・直接訓練の定義と意義を理解する

・直接訓練を安全に開始できる条件を知る

・直接訓練を中止すべき状態を知る

2/14

説明

直接訓練とは、安全な嚥下するための方法を身につけ,食物を嚥下することを通じて嚥下機能を改善させる訓練である。開始には十分な評価と医師・歯科医師の指示を必要とする。安全に嚥下するための方法には、姿勢調整、食物形態調整、嚥下手技、食器の工夫、環境調整などがある。

3/14

説明

直接訓練は食物を用いて実際に食べることにより摂食機能を高める訓練であるため、誤嚥や窒息など深刻な問題を引き起こす可能性がある。訓練の適応を知り、条件を満たしているかを確認して訓練を行うことが大切である。以下のような場合が適応となる。1)非経口的に栄養を摂取している摂食嚥下障害患者のうち,経口摂取開始の前提条件を満たし,医師・歯科医師が訓練可能と判断したもの。2)経口摂取を行っているが,むせや咀嚼困難など何らかの問題を有するもの。前提条件、開始条件は以下に述べる。

4/14

説明

・意識が覚醒:JCSで1桁

・全身状態安定:重篤な併存症なし,バイタル安定,脱水・栄養障害なし

・呼吸状態安定:SpO295 以上,呼吸数 20未満

・唾液,少量の水で嚥下反射あり

・口腔内が清潔で湿潤している

これらの条件を満たしている場合には、さらに嚥下機能のスクリーニング検査および精査を実施し適応を検討する。条件を満たしていない場合には、状態が安定するのを待って再評価を行う。

5/14

説明

嚥下機能評価の結果、直接訓練開始が可能か否かを決定する。一般医療機関や在宅では軽度問題、口腔問題、機会誤嚥で、摂食嚥下に詳しい医師や専門家がいる施設では水分誤嚥から、ごく限られた専門機関では食物誤嚥から開始可能と判断される。しかし、患者の認知機能や全身状態等も直接訓練の安全性に影響を与えるため、種々の情報から医師が総合的に判断する。

6/14

説明

まず、評価をもとに、病態に応じた実現可能な目標を設定する。必ずしも、全量経口摂取することが目標ではない。医学的安定を優先し、状態に応じた目標を立てる。次に、姿勢や食物形態、用いる嚥下手技などを決定し、誰がどの程度の頻度で行うかなど、目標に即したプログラムを立案し、訓練を実施する。訓練中の観察や再評価にて訓練効果を測定し、機能の改善にあわせてプログラムを見直し、さらに訓練を進める。

7/14

説明

誤嚥や肺炎を防止するため、以下の手順で準備を行い,訓練を実施する。

1. 口腔ケア、唾液・痰の喀出 or 吸引、義歯の装着

2. 適切な姿勢と嚥下手技の確認

3. 適切な食物形態の訓練食の用意

4. 食器・環境調整

5. 訓練開始

8/14

説明

訓練中のリスク管理も重要である。体調や状態の変化、嚥下状態、摂食状況に常に配慮し、訓練を進める。注意すべき項目を以下に挙げる。

1.体調・状態の変化として

  • 覚醒状態,顔色,呼吸状態

2.嚥下状態として

  • むせ,咳,湿性嗄声
  • 呼吸,声の変化
  • 口腔内残渣

3.摂食状況として

  • 姿勢や摂食方法など遂行状況と効果
  • 詰め込み,流し込み,注意散漫など危険行動の有無

訓練中にこれらの項目に問題を認めた場合は,直ちに訓練を中止し、医師・他スタッフに報告し指示を仰ぐ。

9/14

説明

訓練開始後、以下の状態が見られる場合には、医師や他スタッフに報告、相談し一旦訓練を中断する。状態が落ち着いた後、再評価し、訓練再開を検討する。

  • 頻回なむせや湿性嗄声
  • 発熱
  • 痰の増加
  • 炎症反応(CRPやWBC高値)
  • 意識状態悪化
  • 全身状態悪化
10/14

説明

注意深く訓練を行っても以下の状態が継続する場合は、訓練が医学的に不安定な状態を引き起こしていると考えられる。直接訓練中止し医学的安定を図る必要がある。医師、嚥下チームのメンバーと協議し、中止を検討する。

  • 肺炎を繰り返す
  • 再評価にて食物誤嚥・唾液誤嚥
  • 呼吸状態悪化が持続する
  • 意識状態悪化が持続する
  • 全身状態悪化が持続する
  • 長期にわたる拒食
11/14

参考文献

  1. 言語聴覚士協会 摂食・嚥下小委員会:経管栄養から経口栄養へ移行する際の基本的手順,言語聴覚士協会,2005.
  2. 才藤栄一:平成11年度厚生科学研究報告書(長寿科学総合研究事業)「摂食・嚥下障害の治療・対応に関する統合的研究」総括研究報告書.平成11年度厚生科学研究費補助金報告書, 1999,1-18.
12/14

 

13/14

 

14/14