
説明
増粘食品とは、液体などにとろみをつけ、飲み込みやすい物性に変化させることができる食品で「増粘食品」と総称される。一方、液体をゼリー状に固めるものをゲル化剤という。ここでは、増粘食品とゲル化剤の特徴、種類、使用方法についてと、増粘食品を利用した経腸栄養剤の半固形化法について解説する。

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増粘食品は、水分などの飲み込みにくい食品に添加することにより、食物の食塊形成や口腔から食道入口部通過までの流動性を調節する働きがあり、温かいものから冷たいものまで温度に関係なくトロミを付けることが出来る食品である。増粘食品は、使用原料から大きく分けて「デンプン系」「グアーガム系」「キサンタンガム系」「カラギーナン系」に大別される。

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各種増粘剤の一般的な特徴1)と、主な商品名とメーカー名を表に記載した。現在の増粘食品の主流はキサンタンガム系の増粘剤を使用したものが多い。なお、商品の原材料名は各メーカーともに増粘多糖類と表記しているところが多い。したがって、原材料名を見ただけではその商品が何系の原料を使用しているかは分かりにくいのが現状である。

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増粘食品の使用方法について、キサンタンガム系の増粘食品を例に説明する。増粘食品を使用する際は、「だま」にならないよう添加する必要があるが、近年の増粘食品では、分散性や溶解性が強化され「だま」になりにくくなっている。しかし、一般的にキサンタンガム系では、温度が高い食品において溶けやすい反面「だま」になりやすいので注意を要する。増粘食品の添加量については、粘度が増しすぎると口腔や咽頭粘膜に付着しべたつき感を生じる。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、学会分類 2021(とろみ)において、嚥下障害者のためのとろみ付き液体を、「薄いとろみ」、「中間のとろみ」、「濃いとろみ」の3段階に分けて表示し、それぞれについて性状の観察所見および,物性測定値を併記している。学会分類 2021(とろみ)に対する添加量は、各メーカーから目安が出されているので参照にしていただきたい。スライド5では、使用時注意点について記載した。

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増粘食品の使用方法について、キサンタンガム系の増粘食品を例に説明する。増粘食品を使用する際は、「だま」にならないよう添加する必要があるが、近年の増粘食品では、分散性や溶解性が強化され「だま」になりにくくなっている。しかし、一般的にキサンタンガム系では、温度が高い食品において溶けやすい反面「だま」になりやすいので注意を要する。増粘食品の添加量については、粘度が増しすぎると口腔や咽頭粘膜に付着しべたつき感を生じる。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、学会分類 2021(とろみ)において、嚥下障害者のためのとろみ付き液体を、「薄いとろみ」、「中間のとろみ」、「濃いとろみ」の3段階に分けて表示し、それぞれについて性状の観察所見および,物性測定値を併記している。学会分類 2021(とろみ)に対する添加量は、各メーカーから目安が出されているので参照にしていただきたい。スライド5では、使用時注意点について記載した。

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増粘食品の数は、数十種類にも及びその中から対象の嚥下機能に適した商品を選び出すのは困難である。また、食材によっても各商品間で使用量が大きく変わるため、各商品の特徴を理解し使用する必要がある。実際に使用するときは、対象の嚥下機能に合わせていつも決まった量を添加し必要最低限の添加量にするよう気をつける必要がある。

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きざみ食に使用する際は、出汁やスープを上手に利用し、あん風に仕上げることがポイントである。ミキサー食に使用する際は、食材と一緒にミキサーにかけるのが基本である。

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ゲル化剤2)は、液体成分を固める性質を持ちゼリーやプリンなどに使用される。少ない添加量で液体を固めることができ、使用量を調整することによって、柔らかな食感から、こんにゃくのような弾力性のある固さまで調節できる。ゲル化剤の種類には、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチンなどがあるが、これらのゲル化剤はそれぞれ違った性質を持っており、用途に応じて使い分ける必要がある。
一般的に、ゼリー食は嚥下障害に適していると言われているが、ゲル化剤が異なれば、食感や物性が変わるため注意が必要である。近年では、温かいゼリー食を作るためのゲル化剤も商品として出ている。
寒天は凝集性が低いため口腔内でばらけやすく、また離水が多いものがあり、注意障害、ペーシング障害など、先行期に問題のある患者、食塊形成能力など口腔機能に問題がある患者、嚥下反射惹起遅延、喉頭挙上不全など咽頭期に問題がある患者では、窒息などの事故に繋がる可能性があり注意が必要である。

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ゼラチンは、牛または豚などの骨・皮などに含まれる硬タンパク質のコラーゲンを、水とともに加熱して分解し抽出したものである。ゼラチンゼリーは、融解温度が20-30度であるため、口腔内に取り込んだときに体温で表面が溶け、滑りがよくなり喉越しのよい食物に仕上げることが出来る。しかし、その反面、認知症などにより先行期に問題がある障害者では、口腔内へ溜め込むことにより、物性が水分に変化してしまい注意が必要である。近年では、冷水でも溶けるゼラチンが開発され、冷たい飲料水でもゼリーが作れるようになっている。

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カラギーナンは、摂食・嚥下障害者用のゲル化剤の原料として最も使用されるゲル化剤である。特徴は、寒天と違い無味無臭で非常に柔らかく軽い弾力を持つ。ゼラチンのような食感と寒天の扱いやすさの両方を併せ持つ。ペクチンについては省略させていただく。

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各種ゲル化剤の比較とゲル化剤の商品名とメーカー名を提示したので参考にしていただきたい。

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各種ゲル化剤の比較とゲル化剤の商品名とメーカー名を提示したので参考にしていただきたい。

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半固形化栄養法は、経管栄養による胃食道逆流や下痢などの合併症を予防するために考案された方法である。
胃食道逆流を予防する至適粘度は、20.000mPa・sと言われている4)。キサンタンガム系のネオハイトロミールIII®((株)フードケア)は、経腸栄養剤に1%添加することにより、胃内環境で胃食道逆流を予防する20.000mPa・sと同等の粘度が得ることができる。また、注入時に液状であることから、8Fr経鼻胃経管栄養チューブからでも容易に注入することが出来る。
半固形化栄養法は、下痢や胃食道逆流を予防できるだけでなく、注入時間の短縮化により、ベッド上安静時間が減少し褥瘡予防に有効で、且つ十分なリハビリ時間の確保ができるなど患者のQOL向上も図れる方法である。

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提示した増粘食品は、ネオハイトロミールIII®であるが、増粘食品の原材料が同成分であれば同じ作用は期待できると予測される。しかし、各商品で増粘多糖類の量や配合比率が違うため胃内での粘度はどれくらいになるかは不明である。他商品を使用する際は、慎重な検討をしていただきたい。経腸栄養剤についても、半消化態栄養剤なら同程度の効果が期待できる。しかし、各商品で蛋白質浮遊率や脂肪浮遊率が異なるので、特に、蛋白浮遊率が少ない商品では十分な粘度が得られない可能性があるので注意が必要である。なお、経腸栄養剤の成分栄養剤、消化態栄養剤では胃内での増粘効果が得られにくい可能性がある。

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増粘食品を用いた半固形化法は、胃内環境において経腸栄養剤に含まれるタンパク質と胃酸、増粘食品がそれぞれ反応し半固形化される方法である。したがって、胃全摘の患者や胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプインヒビター:PPI)などを服用している患者では半固形化形成力が無い、もしくは、非常に弱いことが予測されるので注意が必要である。

参考文献
- 大越ひろ:E.栄養摂取方法 増粘剤(トロミ調整剤)の適切な使用方法.藤谷順子・編、Monthly Book Medical Rehabilitation、57:132-139,2005.
- 手嶋登志子編:高齢者の食介護ハンドブック、医歯薬出版株式会社:52-76,2007.
- 合田文則:半固形化栄養剤(食品)による胃ろうからの短時間注入法,臨床栄養,106(6):757-762,2005.


